スマート望遠鏡「SeeStar S50」を2年間使用した感想・レビューを紹介します。
天体望遠鏡とは?

天体望遠鏡とは、星や惑星、銀河などの天体を観測する装置です。天体望遠鏡の基本的な仕組みは「①光を集める → ②焦点を作る → ③接眼レンズで拡大する → ④架台で支えて動かす」というものです。
| 望遠鏡の役割 | 説明 |
|---|---|
| ①光を集める | 天体望遠鏡の一番大事な役割は「光をたくさん集めること」です。星や惑星から届く光はとても弱いので、レンズや鏡の大きさ(口径)が大きいほど、より多くの光を集められます。これによって、肉眼では見えない暗い星雲や銀河も見えるようになります。 |
| ②焦点を作る(光を一点に集める) | 集めた光はレンズや鏡によって一点に集められます。これを焦点と呼びます。焦点に像が結ばれることで、天体の姿がはっきり映し出されます。 |
| ③接眼レンズで拡大する | 焦点にできた像を、接眼レンズで拡大して観察します。接眼レンズを交換することで倍率を変えられます。 長い焦点距離のレンズ → 高倍率(細かい部分が見える) 短い焦点距離のレンズ → 低倍率(広い範囲が見える) |
| ④架台で支えて動かす | 天体は常に動いているため、望遠鏡が安定して天体を追いかけるための架台が必要です。 |
天体望遠鏡にとって最も重要な要素は「光をたくさん集めること」です。星や惑星から届く光はとても弱いので、光を集めるための「レンズや鏡の大きさ(口径)が大きい」ほど、より多くの光を集められます。これによって、肉眼では見えない暗い星雲や銀河も見えるようになります。この光の集め方によって、主に以下の種類があります。
| 種類 | 光の集め方 | 得意な観測対象 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 屈折式望遠鏡 | レンズ | 月・惑星 | 像が安定してコントラストが高い/メンテナンスが少なく初心者向き | 大口径は重く高価になりやすい |
| 反射式望遠鏡 | 凹面鏡 | 星雲・銀河など暗い天体 | 大口径でも比較的安価/暗い天体に強い | 光軸調整や鏡のメンテナンスが必要 |
| カセグレン式(複合型) | レンズ+鏡 | 惑星から星雲まで幅広く対応 | コンパクトで持ち運びやすい/万能型 | 構造が複雑で価格がやや高め |
また、望遠鏡を支える「架台」にも種類があります。
| 種類 | 動き方 | メリット | デメリット | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| 経緯台 | 上下・左右に動かすシンプル構造 | 軽量で扱いやすい/初心者や持ち運びに便利 | 天体の追尾が難しく、長時間観測や撮影には不向き | 入門用観望、気軽な星空観察 |
| 赤道儀 | 地球の自転に合わせて天体を追尾 | 長時間観測や天体写真撮影に適する/天体を自動で追尾可能 | 極軸合わせが必要で扱いに慣れが必要/重量が増す | 本格的な観測、天体写真撮影 |
スマホコリメート撮影とは?
スマホコリメート撮影とは、天体望遠鏡の接眼レンズにスマホのカメラレンズをぴったり合わせて、望遠鏡で見える像をスマホで撮影する方法です。専用アダプターを使えば、月や惑星の撮影が手軽に楽しめます。
以下写真は、私が以前使用していた初心者向けのカセグレン式望遠鏡「MAKSY60」と付属の専用アダプターです。

スマホコリメート撮影には手軽さという大きな魅力がありますが、実際にやってみると以下のように「できないこと」や「難しいこと」が多いです。
| できないこと・難しいこと | 説明 |
|---|---|
| 位置合わせがシビア | 接眼レンズとスマホカメラの光軸をぴったり合わせないと、像がケラレたり、真っ暗になったりします。 |
| ブレや振動の影響 | シャッターを押すときの振動で像がブレやすい。タイマーやリモコン操作が必要。 |
| 接眼レンズの選定 | ハイアイポイントでないと、スマホのカメラがうまく像を拾えないことがある。 |
| スマホのカメラ設定が必要 | 明るさ、露出、フォーカスなどをマニュアルで調整しないと、天体が白飛びしたり暗すぎたりする。 |
| 月以外は難易度が上がる | 月は明るくて大きいため撮りやすいが、 スマホのセンサー性能やレンズの限界により、ディープスカイ(星雲・銀河)などの長時間露光撮影には不向き。また、 スマホ単体では天体の動きを追尾したり、画像を重ねてノイズを減らす「ライブスタック」などの処理が難しい。 |
| 高倍率での撮影が難しい | 高倍率になると視野が狭くなり、スマホの位置合わせが非常にシビアになる。手持ちではほぼ不可能。 |
電視観望とは?
電視観望とは、望遠鏡に接眼レンズの代わりに天体カメラ(天体撮影に向いている高感度カメラ、CMOSなど)を取り付け、パソコンやタブレットにインストールした専用ソフトウェアに天体をリアルタイムで映し出して楽しむ新しい観測スタイルです。肉眼では見えにくい淡い星雲や星団の光も、光を長めの露光で集め、リアルタイムに重ね合わせる「ライブスタック」を行うことで画面上で鮮明に観察できます。ただし、電視観望を行うために必要な機材は以下の通りで、ハードルが高いです。
| 機材 | 説明 |
|---|---|
| 望遠鏡本体 | 星や惑星などの光を集める中心機材。屈折式・反射式・複合型などがあり、観測対象や用途に応じて選ぶ。 |
| 電動フォーカサー | モーターで望遠鏡などのピント(焦点)を微調整する装置。手動での微妙な操作による振動を防ぎ、PCやコントローラーで精密かつ快適にオートフォーカス(AF)や微調整を行う。 |
| 天体カメラ(CMOSカメラ) | 望遠鏡に取り付けて天体の映像を撮影・配信する高感度カメラ。電視観望ではリアルタイム映像を表示する役割を担う。 |
| 制御用コンピューター | ノートPCやタブレットなど。カメラやフォーカサー、架台の制御、画像処理、ライブスタックなどを行う中心的な操作端末。 |
| 自動導入経緯台 | 観測したい天体を自動で探して望遠鏡を向けてくれる架台。初心者でも簡単に天体を導入・追尾できるが、事前準備(アライメント)に時間が掛かる。 |
| レンズ結露防止用ヒーター | 寒冷地や湿度の高い夜間にレンズが曇るのを防ぐヒーター。安定した観測を支える重要な補助機材。 |
| 光害カットフィルター | 都市部などの人工光(街灯など)による光害を軽減し、星雲や銀河などの淡い天体をより鮮明に映し出すフィルター。 |
上記のように、 必要な機材が電子機器中心になるため、追加費用が高額になります(お金に余裕のある人向け)。また、故障や機器同士の相性による動作トラブルが多いため、光学機器やPCの知識が必要となります。さらに、天体導入やライブスタック時のパラメーター調整など、事前準備に時間が掛かります(趣味に時間が取れる人向け)。
以下写真は、私が以前使用していた電視観望セットです。

スマート望遠鏡「Seestar S50」とは?
スマート望遠鏡とは、天体の電視観望に必要な機器が1つにまとまった天体観測装置です。最大の特徴は、複雑な機材の組み合わせや設定が不要で、本体さえ購入すれば、手持ちのスマートフォンと接続してすぐに天体撮影が始められる点にあります。
その中でも注目を集めたのが、「Seestar S50」というスマート望遠鏡です。これは、天体カメラやASIAIRの開発で知られるZWO社が発売したスマート望遠鏡で、従来のスマート望遠鏡が数十万円以上と高価だった中、約6万円という驚きの価格で登場しました(現在は値上げで約85,000円)。
スマート望遠鏡の比較(手頃な価格帯)
手頃な価格帯で人気となっている主なスマート望遠鏡の比較表は以下のとおりです。
| 項目 | Seestar S50 | Seestar S30 | DWARF3 | Dwarf Mini(先行予約受付中) |
|---|---|---|---|---|
| レンズ口径 | 50mm | 30mm | 望遠:35mm、広角:3.4mm | 30mm |
| レンズ構成 | 3枚 アポクロマート | 3枚 アポクロマート | 4枚 アポクロマート(推定) | 不明 |
| 焦点距離 | 250mm | 150mm | 望遠:150mm 広角:6.7mm |
150mm |
| CMOSセンサー | 望遠:IMX462 | 望遠:IMX662(2.1MP) 広角:Custom Sensor(カラー) |
望遠:IMX678(8.3MP) 広角:IMX307(2MP) |
IMX662(1/2.8インチ、2μmピクセル) |
| 視野角/解像度 | 1.48° / 1920×1080px | 望遠:2.46° 広角:23.2°/望遠・広角:1920×1080px |
望遠:3.38° 広角:50.6° / 最大3840×2160px |
望遠:不明 広角:23.2°/最大1920×1080px |
| 重量 | 約2.5kg | 約1.7kg | 約1.35kg | 約840g |
| ストレージ容量 | 64GB | 64GB | 128GB | 256GB |
| バッテリー容量 | 6000mAh | 6000mAh | 10000mAh | 未公表(約4時間使用可) |
| 通信規格 | Wi-Fi、USB Type-C、Bluetooth | 同左 | Wi-Fi、Bluetooth、USB Type-C | Wi-Fi、Bluetooth、USB Type-C |
| 主要付属品 | ・専用太陽フィルター ・三脚 |
・専用太陽フィルター | ・専用太陽フィルター | 不明 |
| 価格 | 約85,000円 | 約63,000円 | 約80,000円 | 約56,000円(先行予約価格) |
- 公式情報
スマート望遠鏡「Seestar S50」を2年間使用して、実際にどのような感じだったか、次節で詳しく解説します。
動画で見る
本ページの内容は以下動画でも解説しています。
撮影準備の手間や時間が掛からない
「Seestar S50」の撮影準備は、箱から取り出した本体を三脚に取り付けて水平(傾斜3度以内)に設置し、本体電源を入れてるだけです。
→ 
、スマートフォンの専用アプリから観察したい天体を選ぶだけで数分で準備が完了します。
自作の電視観望装置では、真北への設置、ピント合わせ、アライメント作業(明るい星を2つ導入)、画像補正などが必要で、慣れていても15〜30分ほどかかります。
③ 三脚と望遠鏡本体を3/8インチネジで接続します。
④ 三脚を開き、平らな場所に置きます。望遠鏡本体の電源ボタンを長押し(2秒間)し、電源を投入します。

撮影時の操作も超簡単
SeeStar S50では、以下動画のように、アプリで対象を選ぶだけで、自動導入とライブスタック撮影ができます。
光害地でも星雲・星団・彗星が綺麗に撮影できる
以下写真は都市部で撮影した、画像処理を行っていない天体写真です。光害カットフィルターを内蔵(ON/OFF切替可)しているため、光害のある環境でも明るい星雲や銀河であれば、10分前後の露光で十分に写すことができます。
コストパフォーマンスに優れる
価格は約8万円 と非常に手頃です。同等の装置を自作する場合は8万円以上かかることが多く、初心者向けの人気セット(ACUTER OPTICSトラバース + AskarFMA180 + PlayerOneなど)でも10万円以上します。
物理的な拡張性が低い
SeeStar S50は本体一体型のため、鏡筒やカメラの交換といった物理的な拡張ができません。一方、自作装置であれば拡張は可能ですが、費用がかさみやすく、機器同士の相性問題も発生しやすいため、トラブルに悩まされます。物理的な拡張性の低さは、経済的であるというメリットでもあります。
スマート望遠鏡であれば、「近所の公園で鳥を撮影する感覚」で星雲や銀河を撮影できます。
一方、自作装置は「富士山の樹海を彷徨う」ような大変さがあり、私は月を撮影するのが限界で挫折してしまいました。
現在は自宅のベランダにSeestar S50を設置し、室内からスマートフォンで遠隔操作を行っています。快適かつ手軽に天体観測を楽しめております。
まとめ
| 項目 | Seestar S50(スマート望遠鏡) | 自作電視観望装置 | 天体望遠鏡+スマホ撮影 |
|---|---|---|---|
| 準備の手間 | 数分で完了。水平設置+アプリ操作のみ | 真北合わせ、ピント調整、アライメント、画像補正など必要。慣れていても30分はかかる。 | 三脚設置とスマホ固定。比較的簡単だが安定性に難あり |
| 撮影操作 | 「アプリで対象選択」→「自動導入」+「ライブスタック」。AFボタンでピントも自動 | 対象や環境に応じてソフトウェアの細かい調整必須。初心者には難易度が高い | 月や明るい惑星は撮影可能。星雲・銀河はほぼ困難。 |
| 光害対応 | 内蔵光害カットフィルター(ON/OFF可)。都市部でも星雲・銀河が撮れる | 外付けフィルター導入可。ただし調整や追加費用が必要 | 光害の影響を強く受ける。都市部ではほぼ不可 |
| コスト | 約8万円と手頃 | 同等性能で8万円以上。人気セットは10万円超 | 数千円〜数万円(望遠鏡+スマホアダプタ) |
| 拡張性 | 本体一体型で交換不可。シンプルでトラブル少ない | 鏡筒・カメラ交換可。ただし費用増&相性問題あり | 望遠鏡の種類やスマホ性能に依存。拡張性は限定的 |
| 難易度/習熟度 | デジカメで「公園で鳥を撮る感覚」で星雲・銀河が撮れる | 「富士山の樹海を彷徨う」ような複雑さ。挫折しやすい | 月や惑星なら初心者でも可能。 |
| 快適さ | ベランダ設置+室内から遠隔操作可能。非常に手軽 | 設置・調整に時間と労力がかかる | 手軽だが撮れるものは限定的 |
SeeStar S50は定価が約8万4000円ですが、楽天市場では「お買い物マラソン」や「スーパーセール」の時、「割引クーポン(数百円~数千円分)」や「ポイントバック(数千円~1万円分)」があります。うまく買えば、実質約7万円くらいで購入できることもあるので、おすすめです。
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楽天市場の「お買い物マラソン」や「スーパーセール」をうまく活用する方法を以下ページにまとめていますので、ご参考ください。

関連ページ
SeeStar S50の様々な使い方については以下ページで解説しています。

SeeStar S50の初期設定については以下ページで解説しています。


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